食品接触用シリコン印刷で失敗しない3つの条件|規制基準・インク選定・委託先選びの完全ガイド

食品接触用シリコンの安全な印刷:インク選びの3つの重要ポイント

ポイント1:各国の厳しい規制基準を理解する重要性

食品接触用シリコン印刷を行う場合、最初に理解すべきは各国の規制環境です。EU、アメリカ、日本それぞれが異なる基準を設けており、国際販売を視野に入れるなら全て対応する必要があります。

EUではアメリカのFDA規制※1よりもさらに厳格で、移行化学物質※2の制限が極めて厳しい傾向にあります。一方アメリカのFDA基準は、主にシリコン素材そのものの安全性に焦点を当てています。日本の厚生労働省は、ポジティブリスト制度※3を採用しており、承認されたインク材料のみ使用可能です。

国際展開を考えている場合、対応が難しいのはEU基準です。EUでは「REACH規則」により、シリコン製品に使用されるインク成分が人の健康や環境に悪影響を及ぼさないことを証明する必要があります。特にノベルティー制作で複数国への配送を想定している場合は、最初からEU基準対応のインクを選択することが重要です。

シリコン印刷業者を選ぶ際は、対応可能な国の基準をリストアップしてもらい、自社の販売計画と照らし合わせることが不可欠です。実は多くの中小製造業者が「日本で売れているから大丈夫」と考えて国際展開に失敗するケースがあります。物販やノベルティー制作を委託する際は、受託先に「どの国の基準に対応しているのか」「過去に対応した国はどこか」と明確に質問し、実績を確認することをお勧めします。

※1:FDA規制=アメリカの食品医薬品局が定めた食品接触材料の基準
※2:移行化学物質=材料から食品に移行する可能性のある化学物質
※3:ポジティブリスト制度=安全が確認されたもののみリスト化して使用を許可する方式

ポイント2:インク材料選定時の実践的なチェックリスト

シリコン印刷に使用するインク材料の選定は、企業の責任範囲を大きく左右します。安全性の高いインク材料を選ぶためのチェックリストを具体的に提示します。

第一に、インクメーカーから「食品接触適合性の証明書」を入手してください。単なる「安全です」という口頭説明では不十分です。第三者機関による試験結果や認証書類、特にSGS認証やITQi認証などの国際的な認証があるか確認しましょう。実績のある委託先であれば、これらの書類をデータベースで一元管理しており、迅速に提供できるはずです。

第二に、インク材料の成分表を要求し、制限物質※4が含まれていないことを確認します。特にBPA※5やフタル酸※6といった化学物質は世界的に規制が強化されており、これらを含まない「ノンハロゲン」「BPAフリー」インクの選択を強く推奨します。また、重金属(鉛、カドミウム、水銀など)の含有量についても、定量試験データの提出を要求してください。

第三に、実際の製造プロセスで「溶出テスト」を実施したか確認することです。シリコン素材は柔軟性が高く、温度変化や接触によってインク成分が移行しやすい特性があります。理想的には、受託先が食品シミュラント(食品を想定した液体)への溶出試験を実施していることが望ましいです。可能であれば、実際に製造する製品サンプルでテストを行い、結果報告書を入手することをお勧めします。

加えて、インク硬化後の安定性も重要です。UV硬化、熱硬化など硬化方式によって化学特性が変わるため、最終製品の硬度テストや耐熱性テストの実施状況も確認しましょう。

※4:制限物質=法律や規制により使用が禁止または制限されている化学物質
※5:BPA=ビスフェノールA。プラスチック硬化剤として使われていた物質
※6:フタル酸=可塑剤として使われる化学物質。健康影響が懸念されている

ポイント3:ノベルティー・物販委託時の選別基準

ノベルティー制作やシリコン製品の物販を検討する際、単価の安さだけで委託先を選ぶのは危険です。食品接触用シリコン印刷は、コンプライアンス※7の問題が発生すると企業ブランドに深刻なダメージを与えます。回収コストや企業信頼の低下といった見えない損失まで考慮する必要があります。

委託先選定の最優先事項は「品質管理体制の充実度」です。具体的には、ISO規格※8(特にISO 9001品質管理システム、ISO 22000食品安全マネジメント)の認証取得状況、社内検査体制の有無、製造ロット毎のトレーサビリティ管理、不良品の対応フローなどを確認してください。安いが規制対応が曖昧な業者よりも、多少コストが高くても規制対応実績が豊富で、文書化された品質管理体制を持つ業者の方が長期的には安全かつ経済的です。

また見落としやすいポイントとして「インク材料の仕入れ先」があります。同じシリコン素材でも、使用するインクメーカーが異なれば安全性の水準は大きく変わります。「どこのメーカーのインクを使用しているのか」「その材料はどの国の基準に対応しているのか」「在庫の回転率はどの程度か」まで遡って確認できる委託先が信頼できます。古い在庫のインクを使用していないか、定期的に新しい認証基準に対応しているかも重要です。

さらに、ノベルティー制作の場合は「小ロット対応能力」も確認しましょう。キャンペーン用ノベルティーは数百~数千個という小ロット発注が多いため、小ロット生産でも品質管理体制を維持できる業者を選ぶことが重要です。受託先が「最低発注数」をどの程度に設定しており、小ロットでも同じレベルの品質管理を行うかを確認してください。

委託先の選定チェックシートとして、以下の項目を確認することをお勧めします:
・食品接触用インク使用実績の有無と年数
・対応可能な規制基準(EU、FDA、日本厚生労働省など)
・ISO認証の取得状況
・溶出試験などの実施体制
・サンプル製作から納品までのリードタイム
・不良品発生時の対応フロー
・最低発注数

結論として、食品接触用シリコン製品は「安かろう悪かろう」では済まされない製品です。規制対応能力を備え、品質管理体制が整備された委託先選びこそが、ビジネス成功の最大の投資だと考えます。初期段階で手間をかけて信頼できるパートナーを見つけることで、将来的なリスク回避と安定した事業展開が実現できるでしょう。

※7:コンプライアンス=法律や規制に従うこと。企業の社会的責任
※8:ISO規格=国際的な品質・管理基準を定めた規格